Liebe

うちは3人兄妹で、2つ上に兄、真ん中に僕がいて、4つ下に妹がいる。今は兄妹3人とも家を出ていて、実家には父と母と犬2匹が住んでいる。妹は今年の春に就職をして職場の近くの寮に住み始めた。

 

僕は普段、兄と妹と殆ど連絡を取ることがないし、兄妹同士外で飲みに行ったり遊んだりすることはない。母から2人の話しを聞くことが多く、LINEで2人の近況が送られてきたり、僕だけ帰省したときなどに2人の話しを聞くことが多い。母は3人と連絡を取り合っていて、それぞれの出来事をまた個別に知らせてくれているのだと思う。1週間くらい前に母と電話したときに、妹が会社のリモート研修を寮で受けていたら昼休みに寝てしまい、同じ寮に住むまだ顔も知らない同僚が訪ねてきて起こされたという話しを聞いた。最近は昼休みに寝ないように散歩をしているらしい。兄は1ヶ月前くらいに鎌倉に引っ越して彼女と同棲を始めたと聞いた。兄が帰省していると母から今帰ってきてるよ、もしくは○日に帰ってくるよと毎回連絡が来て、それを聞いて合わせて僕も帰ろうかなとなったりして帰ることもある。何だか不思議な距離感だと思う。

 

僕は小さい頃は所謂お兄ちゃん子だった。外や家でも兄とずっと一緒にいて、どこに行くにも兄の後ろをくっついていた。僕が幼稚園に通い始めると、同じ園内にいても構って欲しいが為に、兄の教室まで行って兄がブロックで遊んでいるのを邪魔していたらしい。兄が友達と遊ぶところにもほとんど一緒にいて同い年の友達と遊ぶより、兄と兄の友達と遊ぶことの方が多かった。たぶん僕が勝手に付いて行っていたのだけれど、兄は嫌な顔はせず、兄の友達に可愛いがられるのも嬉しくてどこへ行くにも一緒だったと思う。僕は3歳から中学3年までラグビーをしていたのだけれど、自発的に始めた訳でなく、兄が隣に住むお兄ちゃんに誘われて始めて、それに僕もついて行っていたのがきっかけだった。

 

小学校のとき毎朝の登校は、近所に住む兄の同級生のエンドウくんとエリカちゃんと兄と一緒に登校していた。まず学校から1番離れているエリカちゃんが家に来て、そこからエンドウくんの家に寄り、4人で登校するという流れだった。兄が高学年に差し掛かると、女の子と一緒に登校するのが恥ずかしくなったのか、兄とエリカちゃんが話しいているのをほとんど見なくなり、エンドウくんが来ると、兄はエンドウくんとさっさと前の方を歩いて行ってしまうようになった。その後ろを僕とエリカちゃんはゆっくり歩いていて、まだ女の子と2人でいる恥ずかしさはない僕は兄はどうしたんだろうと思っていて、とりあえず当時はそういうことを“思春期”と呼び、兄は“思春期”に入ったのかと勝手に納得していた。そういう僕も4年生になったときに、エリカちゃんと一緒に登校するのは楽しいけど、同級生に見られたくないという気持ちも出てきて、校門を潜り昇降口が近づいてきた辺りで先行くねと1人で走って行くようになった。兄の卒業式のときに、卒業生一人一人が一言ずつメッセージを繋げていく“呼びかけ”というのがあり、兄の出番が来た瞬間に僕はそれまで堪えていたものが溢れて号泣したこともあった。僕が5年生になると妹が入学してきて、妹も一緒に登校してたかもしれないが、恥ずかしい気持ちからほとんど一緒に登校した記憶がなく1人で行っていた気がする。

 

兄が中学に上がったころから一緒にいることが少なくなった。風呂にも一緒に入らなくなったのもこの頃だと思う。それまで兄と僕が2人部屋で、妹は自分の部屋がたぶんなかったのだけれど、兄が1人部屋になり、僕と妹が同じ部屋になった。兄はテストで学年の20位以内に入れば携帯を買って貰えるという親との約束を果たして、携帯を持ち始めた。部活を始めたり、僕の知らない友達と遊びに行くようになり、帰ってきても自分の部屋にいることが増えた。その頃から兄の知らない部分が増えてきて、どんどん遠くに行ってしまった感覚になった。兄は自分に見せない部分が増え、それを僕も見たいけど見てはいけないと感じていた。その頃、兄と僕はプレステ2キングダムハーツにハマっていて、1人用のゲームだから1.2時間交代と決まっていて、兄がプレイしているときも僕は隣で見ていた。兄の時間が終わると僕の番になるのだけど、兄は自分が終わるとどっかに行ってしまうことが多かった。一緒に何かをすることが殆どなくなってしまったけど、ゲームを理由にすれば一緒にいれるし、僕は見てるほうが兄と一緒にいれるからそっちの方が楽しかった。

 

兄が高校に入ると家で話すことも殆どなくなった。僕も携帯を持ち始め、家にいるときは1人で何かをすることが増えたり、お互いが干渉せずに生活するようになった。兄は部活で遅くて、僕も部活や塾に行ったりで夜ご飯の時間も合わず、偶に一緒に食べるときも殆ど話すことはなかったと思う。僕は高校も兄と同じところへ進学したのだけれど、元々そこは志望校ではなくて、自分の内申点が高くないのと受験勉強をそこまで頑張っていなかったので、受験間近に志望校を変えて結果的に同じ高校へ行くことになった。兄はラグビー部に入っていて、弟が入学してくると兄はラグビー部の人達に話していたらしく、経験者の少ないラグビー部は是非入って欲しいということで、入学して直ぐにラグビー部の人達に囲まれて勧誘を受けたけど、僕はラグビーは中学までと決めていたのでサッカー部に入った。ラグビー部の友達から自然と兄の話しをされることもあって、兄は上手いとかカッコいいとかそういう話しを聞くのは何か嬉しかった。

 

兄は神奈川の大学に通い始め、大学2年のときに通うのが大変で学校の近くで1人暮らしを始めた。ここら辺の話しを僕は全く知らない。今まで一緒に住んでいたから、家にいなくとも友達と遊びに行ったとか部活だとか何となく知っていたけど、家を出て連絡も取らないとなると、何をしているか全く分からなくなった。環境デザインという学部に入り、よさこいサークルに精を出しているというのを母から聞いていた。僕は、兄は人前に出るのが苦手だと思っていたのでよさこい?と思っていた。それでも毎年夏によさこいの大会に出たりしていて、見に行った母が凄かったと言っていて、母からそういう兄の話しを聞くようになったのこの頃からだと思う。そのよさこいサークルは100人程の大所帯らしく、兄は3年次には副代表になったと聞いて兄のそういう姿が全く想像できなくて驚いた。そう聞いて見に行きたくなったが、兄のそういう姿を見るのが少し恥ずかしいのと、兄も僕に見られるのは恥ずかしいだろうと思っていて、僕も留学に行ったりでタイミングが合わず、結局1度も見に行くことはなかった。

 

最近になりようやく、兄とは実家に帰ったときにお酒を飲みながら話せるようになった。僕は兄について知らないことが増え、兄も同様に僕について知らないことが増えたと思う。お互いに恥ずかしさみたいのがまだあるけど、それでいいと思うし、また会って色々話せたらなと思う。鎌倉にも遊びに行きたい。兄の今の恋人や友人のことを知らないし、恋人に向ける笑顔や、友人に向ける笑顔を僕は見ることができない。それは妹も父も母も同じように。それでもみんなの家族に向ける顔が、僕の知らない大事な誰かに向ける顔と同じだと思える。

 

普段家族にカメラを向けるのは恥ずかしいけど、メルとララのお陰で家族の写真が増えてるよ。ありがとうね。またみんなでご飯食べようね。

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